「納得できる進路選びに『やりたいこと』はいらない」3年で3社を経験したライター・ゆぴさんが「リストアップ」をすすめるワケ

学校生活の中で、自分と周りを比べて悩んだ経験ってありませんか?

「学校に馴染めない」

「やりたいことが分からない」

「みんなができることができない」

いろいろな悩みをきっかけに、学校生活や今後の進路が不安になることも多いと思います。

そこで今回は、フリーライターとして活動し『ポンコツなわたしで、生きていく。 〜ゆるふわ思考で、ほどよく働きほどよく暮らす〜』などの著書を刊行する「いしかわ ゆき(ゆぴ)」さんに取材を実施。

中高生時代・会社員時代に感じていたこと」「苦手なことと向き合うための考え方」についてお話を伺いました。

フリーライター:会社などの組織・団体に所属せず、個人で仕事を請け負うライター(主に文章を書くことを生業としている人)。



〈聞き手=りおんせ(青楓館高等学院インターン)〉

【プロフィール】いしかわゆき
早稲田大学文化構想学部卒。Webメディア・新R25編集部を経て2019年に独立。取材やコラムなどの執筆を手掛けるほか、生きづらい世界をいい感じに泳ぐために日々発信をする。著書『書く習慣~自分と人生が変わるいちばん大切な文章力~』(クロスメディア・パブリッシング)は2万部を突破しベストセラーに。

目次

「学校は休まない」ことが当たり前。無理やり熱を下げて通った

ーー私自身、中高生の頃は毎日ヘトヘトになって帰宅をして、学校しんどいな〜と思っていました。ゆぴさんにとって学校はどのような場所でしたか?

「行かなきゃいけない場所」ってイメージでした。

わたしの場合、ちょっと特殊かもしれないんですけど、中2から高3までアメリカの学校だったんですよ。

日本の学校(学年制)とは違い、アメリカの中高は単位制なので、自分で学びたい科目を履修することができるんです。

その反面、授業に出て宿題を提出しないと、単位を落としてしまいます。だから熱が出ても、強い薬を飲んで、無理やり熱を下げて学校に行っていました。


ーー自由度があるぶん、大変さもあったんですね。そのような環境だと学校生活での苦労もありそうですが、実際はどうだったんでしょうか?

もともと引っ込み思案で、友だちが多いタイプではありませんでした。また、英語が全然できなかったので、授業中は絵を描いたり、詩を書いたりして過ごしていました。

そのなかで、数少ない日本人の子たちを見つけて、一緒にランチを食べたり、放課後にアニメを観たりネットをすることを楽しみに、どうにか学校生活を送ることができていました。

しんどかったけど、二次元に重きを置いていたので三次元のことは割とどうでもよかったんです(笑)。二次元がなかったら乗り越えられませんでしたね。「趣味」という「逃げ場」の大切さを知りました。

わずか3年で3社を経験。環境を変えたら視野が広がった

ーー社会に出てからフリーランスになるまで、どのような会社・仕事を経験したのでしょうか?

これまで3つの会社で、複数の仕事を経験しました。

1社目は雑貨メーカーに入社し、営業職をしていました。わたし、やりたいことがまったくなくて。「とにかくホワイト企業で働きたい」という気持ちが強かったというのが正直な気持ちです。

2社目は広告代理店に勤め、クリエイティブディレクターとして経験を積み、3社目ではWebメディアのライターと編集をしていました。

フリーランス:会社などの組織に所属せず、個人で仕事をもらっている人。
広告代理店:クライアント(取引先)の広告活動を請け負い、代理で実施する企業のこと。
クリエイティブディレクター:制作現場をまとめ、プロジェクトの流れを指揮する人。


ーーいろいろな仕事を経験されていますが、別の仕事に挑戦しようと思ったのは、何がきっかけだったのでしょうか?

1社目を転職したのは、営業が向いていないと感じたからです。

対人コミュニケーションがそこまで得意ではなかったことに加えて、お客様のもとに毎日訪問をしないといけないことに疑問を感じていました。

お客様は商品の在庫数を知りたいだけのことも多いので、「わざわざ足を運ばなくても、在庫についてメールで送れば良いのでは?」と感じ、商品の在庫数や画像を載せたメルマガを自作していました。

2社目でクリエイティブディレクターをしていたときは、わたしが思い描いていたクリエイティブ職とのギャップを感じていました。

どれだけ時間をかけて一生懸命に作っても、Web広告のバナーは数字が伸びないとすぐに取り下げられてしまうんです。そこにジレンマを感じていました。

そんなとき、会社にグループ内転職制度があることを知りました。Webメディアのライター職に応募したところ、趣味でブログを書いていたこともあったので、無事に転職が決まりました。

営業:企業の商品やサービスを売り込む人。


ーー著書「ポンコツなわたしで、生きていく。」に、会社に勤めても1年くらいで転職を繰り返していたと書かれていました。短期間で会社を辞めることに抵抗を感じる人も多いのではないかと思うのですが、当時は転職に対してどのような考えをお持ちでしたか?

「会社に入ったら、最低3年間は会社で働かないといけない」という風潮がありますが、わたしも当時はそう思っていました。

でも、転職について調べてみると、「第二新卒」という概念に辿り着きました。「第二新卒」は新卒就職後、数年で退職したり転職活動をしたりする人のこと。

この言葉を知ったこともあり、「わたしはまだ1年しか働いてないけど、転職していいんだ」とポジティブに考えることができました。

また、会社員をやりながら転職活動をしていたので、「もし最悪転職先が決まらなくても、仕事がなくなることはないな」と、あまり不安に感じることはなかったです。

新卒:年度末(3月末)に大学や専門学校、高校などを卒業する学生。


ーー転職で別の会社を経験したことで、環境の変化は実感しましたか?

会社によってルールや働き方が全然違うことが分かりました。

8時ぐらいに出社して掃除・朝礼をするなど、集団行動のようにスケジュールがきっちり決まった会社もあれば、働く時間や場所の制限を受けず、自分自身の判断で働き方を決められる会社もありました。

後者の会社では、昼過ぎに出社したり、カフェで作業したり、自分の好きなぬいぐるみを持ってきて仕事机の上に並べたり、仕事の合間にラーメンを食べに行ったりしてました。

会社というと、「朝起きないといけない」「長時間オフィスで座りっぱなし」ってイメージがあるかもしれないのですが、そうじゃない会社もたくさんあるのだと知りましたね。

会社員とフリーランスの「仕事内容」は同じ。違うのは「働き方」

ーー複数の会社を経て、今はフリーランスとして働かれていると思いますが、そもそも会社員とフリーランスは何が違うのでしょうか?

実は、フリーランスも会社員も仕事内容は大きく変わらないんです。ただ、「働き方」が違います。

ライターを例にしてみると、たとえば、A社が運営するメディアがあったとして、A社の社員の場合は基本的にA社でしか書きません。会社に守られる立場であり、運営に深く携われますが、会社の方針決定には抗えない側面もあります。

フリーランスの場合は、A社を始め、B社やC社などの複数の会社で仕事をすることもあります。メディア運営に対して裁量権はあまりなく、斬られる可能性もある一方で、自ら仕事を断ることもできます。

そう考えると、会社員とフリーランスは、会社に所属しているか所属していないかだけの違いで、自分のスキルを使って働くという点では同じなんですよね。


ーー成長のしやすさという視点では、会社員とフリーランスに違いはありますか?

会社のほうが成長しやすい環境だと思います。会社だと、事業成長や従業員のキャリア形成を踏まえて、いろいろな課題が与えられるんですよ。成長を見込んで難易度の高い仕事が降ってくることもあります。

わたしが会社員ライターだったときも、「編集」「ディレクション」の業務を始め、「月に◯本公開」「検索順位を上げる」などの目標を課せられたことで成長に繋がりました。

でも、フリーランスの場合、主に請け負うのは「今の自分ができる仕事」になります。クライアントは確実にできることを頼みたいので、ライターにはライティングの仕事しか依頼しませんし、納品後の数字を追うところまではしないことが多いです。

また、フリーランスは仕事に対してフィードバックを受けることが難しいです。わたしが会社に勤めていたときは、上司から厳しいことも含めて、さまざまなフィードバックを受けていました。

近年は1on1の重要性が高まり、定期的に面談を行う会社も増えているので、従業員の成長を上司がチェックする機会があります。

でも、フリーランスになってからは、注意されることは少なくなりました。むしろ、「丁寧な原稿ありがとうございます」と褒めていただけることが大半です。

クライアント目線だと、フリーランスを成長させるための時間的工数が割けないため、仕事がある程度できていれば問題ないという考え方もあると思います。

このような背景から、会社員のほうがスキルアップにつながる仕事にチャレンジできるだけでなく、仕事に対するフィードバックを受けられる「成長機会」が多くあるといえます。


ーーもしフリーランスになりたいと思った場合、どうすればなれるのでしょうか?

フリーランスになるのは難しいと思われていますが、なること自体は難しくないんですよ。会社をやめれば良いだけだから。実際に会社員からフリーランスになる人は結構いるんですよ。

前述したように、会社員とフリーランスの違いは「会社に所属しているかどうか」だけです。

フリーランスに憧れている人は、フリーランスというよりは、ライターやデザイナー、エンジニアみたいに、「自分の好きなことで働いている人」に憧れているのかもしれないですね。

もしそうであれば、フリーランスにこだわる必要はないんじゃないかな? 会社に入ったほうが自分のやりたいことができる場合がありますし、もっと言えば会社員じゃないと携われないような規模の大きい仕事もあるんです。

とくにやりたいことがないのなら、とりあえず会社に所属してみて、「これはフリーランスじゃないとできない」ということが生まれたときに、初めてフリーランスという選択肢を検討すればいいと思います。

フリーランスのなかにも、「ここだったら自分のやりたいことができる!」と思える会社を見つけたら、会社員に戻る人もいます。


ーー書籍に「社会人になってからフリーランスの働き方を知った」と書いてありました。もし大学生のときにフリーランスの生き方を知っていたら、就職をせずにフリーランスになっていましたか?

いやぁ、絶対にならないですね(笑)。

今お手伝いしているメディアのなかで、「もしも社長がフリーランスになったら」という連載を持っているのですが、どの社長さんに聞いても、「絶対に一度は会社に勤める」と答えるんですよね。

会社から得られることってたくさんあるんですよ。

会社員を経てからフリーランスになった人と、大学卒業後すぐフリーランスになった人を比べると、前者のほうが成長が早い。

学生時代からバリバリ働いている人を除いて、いきなりフリーランスになった場合、最低限のビジネスマナーや業務の進め方を誰も教えてくれないので、すごく苦労すると思います。

だから、勉強のつもりで1年間だけでもいいので、会社員での働き方を経験したほうが、スムーズにフリーランスになれると思います。新卒フリーランスは茨の道ですよ!

「やりたいこと」が見つからないときは、「嫌なこと」から進路を考える

ーー「学校が合わない・苦手」と考えている人にとって、会社などの組織に入るのは不安も大きいかと思いますが、何かアドバイスはありますか?

何が合っていて、何が合わないのかを言語化することが大事だと思っています。これが分かっていなかったら、ずっと自分に合わない環境を選んでしまって、永遠に転職が終わらないかもしれません。

学校で嫌だと感じる部分は、会社に入っても嫌だと感じる部分です。だから、学校が合わなくて組織に入るのが不安な中高生は、学校の何が合わないかを考えてリストアップしてみてほしいです。

クラスメイトから冷やかされるのが嫌なのか、先生に怒られるのが嫌なのか、人数が多いのが窮屈なのか、勉強が苦手なのか、「嫌なこと」にもいっぱい要素があるじゃないですか。

自分が嫌なことが分かると、次に選ぶ道が見えてくると思うんですよ。大人数が苦手なら、クラスメイトが5人くらいしかいない学校なら合うかもしれない。勉強が苦手なら、さまざまな教科をまんべんなく勉強するよりも、自分の興味のあることだけを勉強できる専門学校なら合うかもしれない。

学校選びでもいろいろな選択ができるように、会社によって環境もさまざまです。

「必ず出社しないといけない」「テレワーク(在宅勤務)ができない」「オフィスワークは長時間座っていないといけない」などの会社に対するイメージは固定観念で、すべての会社がそういうわけじゃないんです。

「会社はこういうものだ」という固定観念に捉われずに、いろいろ見てほしいし、聞いてほしいと思います。

「どんな働き方をしているんですか」「テレワークは導入されているんですか」など、気になることは聞いてみてください。調べてみると、「フルリモート・フルフレックス」や「副業OK」など、実はフリーランスとほぼ同じような働き方ができる会社はたくさんあるんですよ。

選択肢が「会社」か「フリーランス」かという究極の2択で進路を考えると、可能性が狭まってしまいます。

だから、まずはいろいろな学校や会社を知って、自分の「嫌なことリスト」と突き合わせてみてください。それをすることで、自分に合った環境を選べると思います。

フルリモート:会社のオフィスに出勤せず、家などで業務を行う働き方。
フルフレックス:必ず出社しなければならない時間が決まっておらず、従業員が働く時間を自由に決められる制度。
副業:収入を得るために本業以外で行なっている仕事のこと。


ーー「やりたいこと、好きなことを仕事にしよう」という考え方もありますが、もしやりたいことが見つからない場合、進路はどのように考えたら良いんでしょうか?

やりたいことや好きなことが分からなくても、心配しないでください。北野唯我さんの『転職の思考法』によると、やりたいことがある人は、全体の1パーセントしかいないそうです。

だから、やりたいことが分からなくても、「なんとなく興味を持っていること」「やっていて苦じゃないこと」「得意かもしれないこと」をベースに進路を選んでいければ十分。

わたし自身もライターがやりたかったというよりは、息を吸うようにできたことだから、ライターという仕事を選んだに過ぎません。でも、最初はやりたいことではなかったけど、やっているうちにできることが増えて、楽しくなっていく人も多いです。

中高生は進路に迷う時期かと思います。興味のあることが分からない場合は、先ほどのリストアップを活かして、最低限「嫌なこと」や「苦手なこと」を回避できる環境にいれば苦しむことはないと思うので、そこで改めて自分の世界を広げてみるといいと思います。

「世界を広げる」というのは、自分のなかに知識を入れること。つまり「知る」ことです。

わたしが早期転職を選べたのは「第二新卒」を知ったから。「フリーランス」を選べたのは、「フリーランス」を知ったから。「知る」ことは、自分の選択肢を増やすことなんです。

本を読んだり、いろんな人と話したり、ネットで調べたりして、自分の世界を広げてみてください。それが、進路を決める最初の一歩になるはずです。



インタビューありがとうございました!

いしかわゆき(ゆぴ)さん SNS情報など

▼書籍

書く習慣
〜自分と人生が変わるいちばん大切な文章力〜

ポンコツなわたしで、生きていく。
〜ゆるふわ思考で、ほどよく働きほどよく暮らす〜

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この記事を書いた人

青楓館高等学院インターン
地元愛媛の公立中学校→生徒数1万人超えの通信制高校を卒業→通信制大学に進学予定。主にポスターやバナーなどのデザインと、Instagramの運用をやっています。世界中をうろうろしながら面白くて新しいものをつくり続けたいです。お布団とお風呂が好き。

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